TadaoYamaokaの開発日記

個人開発しているスマホアプリや将棋AIの開発ネタを中心に書いていきます。

2017-01-01から1年間の記事一覧

将棋でディープラーニングする その51(ディリクレノイズ)

電王トーナメント版のdlshogiでは、Policyの読み漏れを回避するために、自分の手番の局面だけ、Policyの予測するそれぞれの手について1/1000の確率で値を1.5倍にするということを行っていた。 自分の手番の局面だけにしたのは、相手の局面にもノイズを入れる…

C++でディリクレ分布による乱数生成

C++

C++にディリクレ分布で乱数生成する標準関数は用意されていない。ガンマ分布で乱数生成する標準関数std::gamma_distributionが用意されているので、 Dirichlet distribution - Wikipedia に書かれている方法を使って、ガンマ分布で乱数y1,...,yKを生成し、 …

ディリクレ分布の可視化

AlphaZeroのMCTSのルートノードではディリクレノイズを加えることで、全ての手をランダムで選ばれやすくしている。 以前の記事で、2次元のディリクレ分布を可視化したが、3次元の場合の可視化ができないか調べていたら、以下のページを見つけたので試してみ…

AlphaZero Chess/Shogiの論文を読む その3

前回までに個人的に気になった点はだいたい書いたので、今回は残った部分で気になったところを拾って書きます。 スケーラビリティ 思考時間を増やした場合、αβ探索よりもレーティングの伸びが良い。 これはAlphaZeroのMCTSがαβ探索より思考時間を短縮できる…

AlphaZero Chess/Shogiの論文を読む その2(AlphaGo Zeroとの差分)

AlphaZero Chee/Shogiの論文についての続きです。 今回はAlphaGo Zeroとの差分について書きます。AlphaGo Zeroの論文については、以前に書いた記事を参照ください。 ネットワーク構成 ニューラルネットワークの構成は、AlphaGo Zeroと同じ、PolicyとValueを…

AlphaZero Chess/Shogiの論文を読む

DeepMindからAlphaGo Zeroと同じ方法で、チェスと将棋でトップレベルを上回ったという論文が発表されました。 [1712.01815] Mastering Chess and Shogi by Self-Play with a General Reinforcement Learning Algorithmドメイン知識を用いないスクラッチから…

将棋でディープラーニングする その50(ブートストラップ【訂正】)

以前に書いたブートストラップの説明に誤りがあったのと、Chainerで誤差逆伝播の効率化ができたので、追加記事を書きます。 間違っていた内容 以前に書いた記事で、2確率変数の交差エントロピーは、確率変数がシグモイド関数の場合、 で表され、偏微分が、 …

Jupyter QtConsoleのTips

ほぼ自分用のメモ。 OSのコマンド実行 先頭に「!」を付ける。 例) !dir参考:IPython reference — IPython 8.1.0 documentation グラフをインラインで表示 %matplotlib inline参考:IPython reference — IPython 8.1.0 documentation グラフを別ウィンドウ…

将棋AIの進捗 その9(千日手対応)

dlshogiを千日手に対応させました。対応方法は以下の通り。 value networkで評価中に千日手チェックを行い、value networkの評価が終わったら、value networkの値を使わずに千日手チェックの結果を使うようにする。 同じ局面でも経路によって千日手チェック…

将棋でディープラーニングする その49(再学習)

ResNetのブロック数を10にして、elmoで生成した深さ8の局面を使って、学習をやり直しています。 スクラッチからの学習も試したいところですが、モデルの性能を評価するには、既存将棋ソフトで生成した棋譜は役に立ちます。 tanhバージョン はじめ、vlaue net…

世界コンピュータ将棋選手権 ライブラリ登録

dlshogiをライブラリ登録しました。 コンピュータ将棋選手権使用可能ライブラリディープラーニングを使って将棋AIを開発したい方のお役に立てば幸いです。第5回電王トーナメントバージョンは、いろいろとバグがあったので、↓このコミットがバグを修正したソ…

将棋でディープラーニングする その48(ResNet)

これまでニューラルネットワークの構成に、5ブロックのResNetを使ってきたが、層を増やすると精度がどれくらい上がるか実験を行ってみた。これまでは、ResNetの構成は、こちらの論文([1603.05027] Identity Mappings in Deep Residual Networks)で精度が高…

将棋でディープラーニングする その47(全結合)

AlphaGo Zeroでは、policy networkの出力ラベルを石の色×座標+passで表しており、全結合層で出力を行っている。 Fan Hui版AlphaGoでは1×1フィルターの畳み込み層を出力層としていた。 出力層を全結合にした理由は、論文では説明されていないが、精度が上がる…

将棋でディープラーニングする その46(出力ラベルの表現方法)

開発してるdlshogiでは、出力ラベルを(駒の種類×移動方向+持ち駒の種類)×座標で表現し、出力層にAlphaGoを参考に1×1の畳み込み層を使用している。 AlphaGo Zeroでは、出力ラベルを石の色×座標+passで表しており、全結合層で出力を行っている。 1×1の畳み込み…

dlshogiのバグ報告

電王トーナメントバージョンを公開しましたが、致命的なバグがありました。移動を表すラベルにバグがあり、いくつかの異なるラベルが同じラベルに割り振られていました。 このバグのため学習の精度がかなり落ちていたと思われます。モデルの学習からやり直し…

将棋でディープラーニングする その45(高速化)

現在のdlshogiの実装では、NPSが2500程度しかでていないため、高速化できる箇所がないかを検討している。モンテカルロ木探索でpolicyとvalueをGPUで計算すると、GPUの実行時間が処理時間のほとんどを占めているため、CPUの論理コア数以上のスレッドで並列に…

dlshogiのビルド済みファイル公開

dlshogiの第5回将棋電王トーナメントバージョンのビルド済みファイルを公開しました。elmoで生成した35.8億局面を学習済みモデルと、モンテカルロ木探索で事前探索した定跡も含んでいます。CUDA、Pythonの環境構築が必要になるので、なるだけ丁寧に説明を記…

第5回将棋電王トーナメント 出場結果

第5回将棋電王トーナメントに参加しました。本日は予選が行われ、dlshogiは3勝5敗という結果で、予選落ちとなりました。 3回戦と6回戦は、秒読みに入ってから将棋所のinfo stringの出力に時間がかかり、優勢にかかわらず時間切れ負けとなってしまうという残…

将棋でディープラーニングする その44(L2正則化)

将棋AIのPolicy NetworkとValue Networkのマルチタスク学習でのL2正則化の効果を測定してみた。 正則化なし loss policy accuracy value accuracy L2正則化係数 loss policy accuracy value accuracy 考察 正則化なしでも、trainとlossにそれほど差がないが…

将棋でディープラーニングする その43(ValueNetの出力をtanhにする2)

前回、Value Networkの出力をtanhにした場合とsigmoidにした場合で比較を行ったが、マルチタスク学習を行っているため、はっきりした結果がわからなかった。今回は、Value Networkのみの学習で比較を行った。 以下の2パターンで比較した。 出力関数 損失関数…

tanh vs sigmoid

AlphaGoのValue Networkの出力にはtanhが使用されている。 一方、将棋AIでは評価関数から勝率に変換する際、sigmoidが使われている。tanhとsigmoidのどちらがよいか、dlshogiの学習で検証してみたが、Policy NetworkとValue Networkのマルチタスク学習を行っ…

将棋でディープラーニングする その42(ValueNetの出力をtanhにする)

将棋AIでは、評価関数をsigmoid関数で[0,1]の範囲で勝率にすることが行われている。 elmoの損失関数には、勝率の交差エントロピーと、浅い探索と深い探索の評価値から求めた勝率の交差エントロピーの和が使われている。一方、AlphaGoでは報酬に[-1,1]が使用…

将棋でディープラーニングする その41(モーメントありSGD)

AlphaGo Zeroのニューラルネットワークの学習の最適化に使用されているモーメントありSGDを将棋AIで試してみた。以前に、最適化手法を比較した際、Adamのような学習率を自動で調整する手法よりSGDの方が学習効率が高かった。 AlphaGo FanバージョンでもSGDが…

将棋でディープラーニングする その40(入力特徴に履歴追加)

その39からずいぶん期間が空きましたが、AlphaGo Zeroの論文を読んで試したいことができたので、AlphaGo Zeroの論文の方法が将棋AIに応用が可能か少しずつ試していこうと思います。AlphaGo Zeroの特徴については、別の記事に記載していますので、参照してく…

WindowsにChainer v3+CUDA9+cuDNN7をインストールする

Chainer v3(cupy v2)がCUDA9に対応したので、バージョンアップしました。 Chainer v3はcuDNNも最新のバージョン7に対応しているので、cuDNNも7にしました。インストール手順は、以前のバージョンと同様です。chainerをバージョンアップする際は、chainerとcu…

WindowsにAnaconda3でPython 3.6をインストールする

以前はChainerとTensorflowがPython3.6に対応していなかったため、Anaconda3のPython3.5系を使用していた。 現在は、ChainerもTensorflowもPython3.6に対応しているため、Python3.6に入れ替えを行った。Anaconda | Individual Edition から、Python 3.6 vers…

Chainerで計算グラフの可視化

Chainerの計算グラフの可視化機能を使ったことなかったので使ってみた。将棋AIのPolicy networkとValue networkを結合したWide ResNetを可視化してみた。 dotファイル出力 Visualization of Computational Graph — Chainer 7.8.1 documentation このページの…

AlphaGo Zeroの論文を読む その5(ドメイン知識)

前回までで、実装に必要な内容についてほぼ解説しました。今回は、補足的な内容です。 ドメイン知識 論文には以下の一文が記載されている。 Our primary contribution is to demonstrate that superhuman performance can be achieved without human domain …

AlphaGo Zeroの論文を読む その4(自己対局)

その3の続き 自己対局パイプライン 自己対局パイプラインは、3つの主要な部分から構成される。 最適化 評価 自己対局 これらは並行で実行される。 最適化 ミニバッチサイズ:2,048 (32バッチずつ別々のGPUで実行) ミニバッチデータは直近50万の自己対局のす…

AlphaGo Zeroの論文を読む その3(探索アルゴリズム)

その2の続き今回は対局時の探索アルゴリズムについてです。 探索アルゴリズム 対局時はpolicyとvalueを使ったモンテカルロ木探索(APV-MCTS)を使用する。 探索は複数スレッドで並列に行う。探索木の各ノードsは以下の情報を持つ。 N(s,a) 行動aの訪問回数 W(s…