TadaoYamaokaの開発日記

個人開発しているスマホアプリや将棋AIの開発ネタを中心に書いていきます。

【読書ノート】機械学習エンジニアのためのTransformers

書籍「機械学習エンジニアのためのTransformers」を読んだので内容をまとめる。
以下の内容は、ほとんどClaude3 Opusを使用して作成している。

第1章 入門Transformers

いる。さらに、Transformer系モデルのGPTとBERTが紹介され、自然言語処理の分類、固有表現認識、質問応答などのタスクにおいて、TransformersライブラリがTransformerモデルを簡単に適用できることが示されている。最後にはHugging Faceのエコシステムが概観されている。

重要なポイント

  • Transformerはエンコーダ・デコーダフレームワーク、アテンション機構、転移学習を組み合わせている
  • GPTやBERTなどの代表的なモデルが登場し、自然言語処理ベンチマークを更新した
  • Hugging Faceのエコシステムを使うことで、最先端のモデルを簡単に利用できる

理解度確認の質問

  • Transformerが従来のリカレントニューラルネットワークと比べて優れている点は何ですか?
  • 転移学習がTransformerの成功にどのように貢献しましたか?
  • Hugging Faceのエコシステムにはどのようなコンポーネントがありますか?

重要な概念

  • エンコーダ・デコーダアーキテクチャ: 入力系列から情報をエンコードし、出力系列を生成するデコーダに引き渡すモデル構成である。
  • アテンション機構: 系列内の要素間の関連性を学習可能にする仕組みである。Transformerにおいては、セルフアテンションを用いて同一系列内のすべてのトークンの関連性が計算される。
  • 転移学習: 事前学習済みモデルを新しいタスクに適応(ファインチューニング)することで、少量のデータでも高い性能を発揮できる学習手法である。

第2章 テキスト分類

2章では、具体的なTransformerの適用例として、テキスト分類モデルの構築方法が解説されている。データセットにはEmotion datasetが用いられ、6種類の感情ラベルの分類が試みられる。まず、入力テキストのトークン化について、文字トークン化、単語トークン化、サブワードトークン化の3つの手法の特徴が解説され、DistilBERTトークナイザーの動作が詳述されている。次に、事前学習済みTransformerを使ってテキスト分類モデルを構築する2つの手法(特徴ベースとファインチューニング)が紹介され、それぞれPyTorchコードによる実装方法が説明されている。最後にモデルの保存方法について触れられ、学習したモデルを用いて新しいテキストの予測を行う方法が紹介されている。

重要なポイント

  • Datasetsを使ってデータセットの前処理を効率的に行える
  • DistilBERTを特徴抽出器として使う方法とファインチューニングする方法がある
  • 混同行列などを用いたエラー分析によってモデルの改善点を見つけられる

理解度確認の質問

  • テキストを数値に変換するトークン化の方法にはどのようなものがありますか?
  • DistilBERTモデルをテキスト分類に適用する2つのアプローチの違いは何ですか?
  • 混同行列からどのような情報が得られますか?

重要な概念

  • トークン化: 入力テキストを言語モデルで処理可能な単位(トークン)に分割することである。
  • 文字トークン化、単語トークン化、サブワードトークン化: トークン化の代表的な3つの手法である。サブワードトークン化は文字と単語の長所を組み合わせたものである。
  • 事前学習済みモデルの利用: ファインチューニングと特徴ベースの2種類の手法がある。前者はモデル全体を更新するのに対し、後者は最終層のみを更新するものである。

第3章 Transformerの詳細

3章では、Transformerの内部構造について深堀りされ、アテンション機構の数式や実装方法が解説されている。まず、Transformerのエンコーダ・デコーダアーキテクチャの概要が示され、各モジュールの役割が説明される。次に、エンコーダについて、セルフアテンション層と順伝播層の実装方法が順を追って解説され、位置エンコーディングなど細部の仕組みについても触れられている。さらにBERTやGPT、T5など、派生モデルのバリエーションとその特徴についてまとめられている。

重要なポイント

理解度確認の質問

  • セルフアテンションはどのような計算をしていますか?
  • Transformerを言語モデルとして事前学習するときのタスクと、分類タスクで使うときの違いは何ですか?
  • エンコーダのみ、デコーダのみ、エンコーダ・デコーダの3つのアーキテクチャの主な用途は何ですか?

重要な概念

  • セルフアテンション: 同一系列内のすべてのトークンに対してアテンションを計算し、各トークンの埋め込み表現を生成するものである。
  • スケール化ドット積アテンション: セルフアテンションの実装方法である。クエリ、キー、バリューの3つのベクトルを使って類似度が計算される。
  • マルチヘッドアテンション: 複数のアテンション層を並列に配置することで、様々な観点からのアテンションを可能にする仕組みである。

第4章 多言語の固有表現認識

4章では、Transformerを多言語の固有表現認識に適用する方法が解説されている。WikiANNデータセットが用いられ、XLM-RoBERTaというMultilingualなTransformerモデルを使用することで、100以上の言語に対応した固有表現認識モデルが構築される。まず、データセットの読み込みから、トークン化、ラベル付与までの一連の前処理の流れが説明され、PyTorchによる実装例が示されている。次に、XLM-RoBERTaモデルがファインチューニングされ、複数言語での固有表現認識性能が評価される。最後に、モデルの予測エラーを分析することで、改善のためのヒントを得る方法が紹介されている。

重要なポイント

  • 言語モデルを使うことで言語間の転移学習が可能になる
  • トークン化では言語によって注意すべき点がある
  • 複数言語での同時学習がモデルの性能向上に有効

理解度確認の質問

  • 言語モデルのゼロショット学習とはどのようなものですか?
  • 多言語でトークン化を行う際の課題は何ですか?
  • 複数言語で同時にファインチューニングを行うことでどのような効果が得られますか?

重要な概念

  • 多言語Transformer: 事前学習時に複数言語のコーパスを用いることで、言語間の知識転移を可能にしたTransformerモデルのことである。
  • トークナイザーのパイプライン: テキスト正規化、事前トークン化、トークン化、後処理の4つのステップから成る、トークン化の一連の流れを指す。
  • IOB2形式: Inside-Outside-Beginningの略である。固有表現の開始位置にB-タグ、内部にI-タグ、それ以外にOタグを付与するアノテーション方式である。

5章 テキスト生成

テキスト生成は、GPT-2のような言語モデルが人間に近い自然なテキストを生成できるという驚くべき能力である。生成の仕組みは、与えられた文脈から次の単語を予測し、それを繰り返すことによって行われる。生成の品質はデコード手法に大きく依存し、貪欲法、ビームサーチ、サンプリング手法などがよく使われる。適切なデコード手法の選択は、望むアウトプットの性質によって異なる。

重要なポイント

  • テキスト生成では、生成されたトークンごとに少なくとも1回のフォワードパスが必要
  • 貪欲法は決定論的で正しい出力が好まれる短い系列の生成に有用
  • ビームサーチは各ステップでもっとも確率の高いトークンをデコードする代わりに、上位b件のもっとも確率の高いトークンを記録
  • Top-kサンプリングは確率の高いkトークンからだけサンプリングすることで確率の低い選択肢を避ける
  • Top-pサンプリングは固定されたしきい値を選ぶのではなく、トークンの候補を動的に選ぶための条件を設定する

理解度確認の質問

1. GPT-2がテキストを生成する仕組みを説明してください。
2. 貪欲法によるデコードの欠点は何ですか?
3. ビームサーチとTop-kサンプリングの違いは何ですか?

重要な概念

  • デコード戦略:言語モデルの確率的出力をテキストに変換する手法のこと。貪欲法、ビームサーチ、サンプリング手法などがある。
  • 貪欲法:各時刻で確率が一番高いトークンを貪欲に選択するデコード手法。
  • ビームサーチ:各ステップでもっとも確率の高いトークンをデコードする代わりに、上位b件のもっとも確率の高いトークンを記録しておく手法。
  • Top-kサンプリング:確率の高いkトークンからだけサンプリングすることで、確率の低い選択肢を避ける手法。
  • Top-pサンプリング:選択範囲内の確率がある値に達するまでトークンを動的に選択していく手法。

6章 要約

要約のタスクは、長い文章から重要な情報を抽出し、短くまとめるという、Transformerにとって難易度の高いタスクである。データセットとしては、ニュース記事とその要約からなるCNN/DailyMailコーパスがよく使われる。パイプラインの中で、Transformerモデルはエンコーダによって文章の意味を理解し、デコーダによって要約を生成する。このタスクでは、テキストと要約の関連性を評価する指標としてROUGEスコアが用いられる。要約モデルの学習には、教師あり学習とファインチューニングを組み合わせて行われる。

重要なポイント

  • CNN/DailyMailデータセットは抽象的な要約を含み、単純な抜粋ではない
  • 貪欲法によるデコードは多様性を必要とするテキスト生成タスクにはほとんど使われない
  • ROUGEスコアは、精度よりも高い再現率が重要である要約のようなアプリケーションのために開発された
  • 要約モデルの学習では、教師あり学習とファインチューニングを組み合わせて行う
  • 要約はモデルの文脈長よりも長い文書をどのように要約するかが課題の一つ

理解度確認の質問

1. CNN/DailyMailデータセットの特徴は何ですか?
2. ROUGEスコアとは何ですか?どのようなタスクの評価に使われますか?
3. 要約モデルの学習には、どのような手法が使われますか?

重要な概念

  • ROUGE (Recall-Oriented Understudy for Gisting Evaluation):再現率ベースの要約の自動評価指標。参照要約に含まれるn-gramのうち、システム要約にも含まれるものの割合を測定する。
  • Teacher forcing:系列変換モデルの学習手法の一つ。デコーダが、正解の出力系列を一つ前の時刻の入力として用いる。
  • ファインチューニング:事前学習済みのモデルを、下流のタスクに合わせて追加学習すること。少量のデータでも効率的に学習できる。
  • データ拡張:既存のデータに変化を加えて新しいデータを生成すること。学習データ不足を補う目的で使われる。
  • Transfer learning(転移学習):あるタスクで学習したモデルの知識を、別のタスクに活用すること。事前学習済みモデルの利用などがこれにあたる。

7章 質問応答

質問応答は、与えられた文書から質問の答えを見つけ出すタスクである。大量の文書をすばやく処理し、質問に対する的確な回答を提示できるシステムが求められる。質問応答システムの構築には、関連する文書を検索するRetrieverと、検索された文書から回答を抽出するReaderの2つのコンポーネントが必要である。Retrieverの性能評価には再現率が、Readerの評価には正解との一致率と適合率・再現率の調和平均F1スコアが用いられる。Transformerを用いることで、高度な質問応答システムを実現できるが、ドメイン特化の学習データが不可欠である。

重要なポイント

  • 質問応答システムはクローズドドメインとオープンドメインに大別される
  • Retrieverは関連文書の検索、Readerは回答の抽出を担当する
  • Exact MatchとF1スコアはReaderの性能評価に用いられる重要な指標
  • SQuADはTransformerの読解能力のベンチマークとしてよく用いられるデータセット
  • ドメイン特化の学習データを使ったファインチューニングが質問応答システムの性能向上に有効

理解度確認の質問

1. 質問応答システムを構成する2つの主要コンポーネントは何ですか?
2. クローズドドメインの質問応答とオープンドメインの質問応答の違いは何ですか?
3. BM25とDPRはどのような検索アルゴリズムですか?

重要な概念

  • Retriever:質問に関連する文書を検索するコンポーネント。TF-IDFやBM25などのキーワードベースの手法と、DPRなどの分散表現ベースの手法がある。
  • Reader:検索された文書から回答を抽出するコンポーネント。Transformerベースの読解モデルが用いられる。
  • SQuAD (Stanford Question Answering Dataset):Wikipediaの記事から作成された質問応答データセット。Transformerの読解能力の評価によく用いられる。
  • Exact Match:予測と正解の文字列が完全に一致しているかを評価する指標。
  • F1スコア:適合率と再現率の調和平均。予測と正解の部分一致を評価する指標。

8章 Transformerの高速化

Transformerは高い性能を示す反面、推論速度の遅さとメモリ使用量の大きさが実用上の課題となっている。これらの問題に対処するため、知識蒸留、量子化、枝刈り、ONNX Runtimeを用いたグラフ最適化などの手法が開発されている。知識蒸留は大きな教師モデルの知識を小さな生徒モデルに転移する手法であり、量子化浮動小数点数を低ビットの整数で表現することで計算効率を高める。枝刈りは不要な重みを削除してモデルを小さくする手法である。ONNX Runtimeは計算グラフの最適化によって推論速度を高速化する。これらの手法を適切に組み合わせることで、実用的な性能を持つTransformerモデルを構築できる。

重要なポイント

  • 知識蒸留は教師モデルの知識を生徒モデルに転移することで、モデルを小さくし高速化する
  • 量子化浮動小数点数を低ビットの整数で表現することで、計算効率とメモリ効率を高める
  • 枝刈りは重要度の低い重みを削除することで、モデルを小さくする
  • ONNX Runtimeは計算グラフの最適化によって推論速度を高速化する
  • これらの手法を適切に組み合わせることが、実用的なTransformerモデルの構築に重要

理解度確認の質問

1. 知識蒸留における「教師モデル」と「生徒モデル」の役割は何ですか?
2. 量子化によってモデルの計算効率が上がるのはなぜですか?
3. Movement Pruningの基本的なアイデアを説明してください。

重要な概念

  • 知識蒸留:大きな教師モデルの知識を小さな生徒モデルに転移することで、モデルを小さくし高速化する手法。
  • 量子化浮動小数点数を低ビットの整数で表現することで、計算効率とメモリ効率を高める手法。
  • 枝刈り:重要度の低い重みを削除することで、モデルを小さくする手法。Magnitude PruningとMovement Pruningが代表的。
  • ONNX:PyTorchやTensorFlowなどさまざまなフレームワークディープラーニングモデルを表現するための共通の標準規格。
  • ONNX Runtime:ONNXモデルの推論を高速化するためのランタイムエンジン。計算グラフの最適化などを行う。

9章 ラベルのないまたは少ない状況への対応方法

9章では、ラベル付きデータがほとんどない場合に適した手法について解説されている。最適な手法は、利用可能なデータ量やラベル付けの割合によって異なる。ゼロショット学習、ドメイン適応、埋め込みルックアップ、少数事例学習などの手法が紹介されている。また、ラベルなしデータを活用する手法として、教師なしデータ拡張や不確かさを考慮した自己学習などが挙げられている。

重要なポイント:

  • ラベル付きデータの量によって最適な手法が異なる
  • ゼロショット学習はラベル付きデータがない場合に有効
  • ドメイン適応は言語モデルのファインチューニングに役立つ
  • 埋め込みルックアップは少数のラベル付きデータで効果的
  • ラベルなしデータを活用することでモデルの性能向上が期待できる

理解度確認の質問

  • ゼロショット学習とは何ですか?
  • ドメイン適応はどのように行われますか?
  • 教師なしデータ拡張の中心となる考え方は何ですか?

重要な概念

  • ゼロショット学習: ラベル付きデータを一切使わずに分類を行う手法
  • ドメイン適応: 事前学習済みモデルをターゲットドメインのデータで追加学習する手法
  • 教師なしデータ拡張: ラベルのない事例と変化させた事例に対してモデルの予測を一致させる手法

10章 Transformerをゼロから学習する

10章では、大規模なデータを用いてTransformerモデルをゼロから学習する方法について解説しています。具体的には、Pythonソースコードを生成するCodeParrotというモデルを構築する過程が紹介されています。大規模なコードデータセットの収集、カスタムトークナイザーの作成、複数のGPUを使ったモデルの学習など、各ステップの詳細が説明されています。

重要なポイント

  • 大規模なデータセットの収集と処理が重要
  • データセットに適したトークナイザーを作成する必要がある
  • 効率的な学習のためには複数のGPUを活用すべき
  • 学習済みモデルの性能評価には注意が必要

理解度確認の質問

  • CodeParrotのデータセットはどのように収集されましたか?
  • トークナイザーを学習するために必要なことは何ですか?
  • 勾配累積とチェックポインティングの役割は何ですか?

重要な概念

  • BPEトークナイザー: 頻出するトークンの組み合わせを語彙に追加することで、トークン数を削減できるトークナイザー
  • 勾配累積: バッチサイズが大きすぎる場合に、複数回の逆伝播で勾配を蓄積する手法
  • チェックポインティング: メモリ使用量を抑えるために、計算グラフの一部を保存せずに再計算する手法

11章 Transformerの未来

11章では、Transformerの発展に向けた最新の研究トピックが紹介されている。モデルのスケーリング則やアテンション機構の効率化など、モデルの大規模化に関する議論が行われている。また、画像や音声などのテキスト以外のモダリティへのTransformerの適用事例が示されている。さらに、マルチモーダルなTransformerモデルの可能性についても言及されている。

重要なポイント

  • モデルのスケーリング則が経験的に示されている
  • アテンション機構の効率化が重要な研究トピックとなっている
  • 画像、音声、テーブルなどのテキスト以外のモダリティへのTransformerの適用が進んでいる
  • テキストと画像を組み合わせたマルチモーダルなモデルが登場している
理解度確認の質問
  • スケーリング則とは何ですか?
  • アテンション機構の効率化にはどのような手法がありますか?
  • wav2vecはどのようなモデルですか?
  • CLIPはどのような学習方法を用いていますか?

重要な概念

  • スケーリング則: モデルのパラメータ数、データ量、計算量とモデルの性能の関係を表す経験則
  • スパースアテンション: アテンション行列の一部を間引くことで計算量を削減する手法
  • wav2vec: 音声認識のために、ラベルなしの音声データから表現を学習するモデル
  • CLIP: 画像とテキストの対照学習によって、画像分類などのタスクを解決するモデル

書評

Transformerは自然言語処理の分野に大きな革新をもたらし、GPTやBERTなどの画期的なモデルを生み出した。本書は、Transformerの基礎から応用までを網羅的に解説し、機械学習エンジニアがTransformerを実務で活用するための知識を提供している。

まず、Transformerのアーキテクチャとその特徴であるエンコーダ・デコーダ構造、アテンション機構、転移学習について説明し、Hugging Faceのエコシステムを使った実装方法を紹介している。次に、テキスト分類や固有表現認識など具体的なタスクへのTransformerの適用方法を解説し、事前学習済みモデルのファインチューニングや特徴ベースの手法などを示している。

さらに、Transformerの内部構造を詳細に解説し、セルフアテンションや位置エンコーディングなどの仕組みを説明するとともに、GPTやBERTなど派生モデルのアーキテクチャの違いについても触れている。また、多言語対応モデルを使った言語間の転移学習や、要約、質問応答など高度なタスクへのTransformerの適用方法も紹介している。

一方で、Transformerの推論速度の遅さとメモリ使用量の大きさという実用上の課題についても言及し、知識蒸留、量子化、枝刈りなどのモデル軽量化手法や、ONNX Runtimeを用いた推論の高速化手法などを解説している。また、ラベル付きデータが不足している場合の対処法として、ゼロショット学習やドメイン適応、教師なしデータ拡張などの手法を紹介している。

最後に、Transformerの発展に向けた最新の研究トピックとして、モデルのスケーリング則やアテンション機構の効率化、画像や音声などのテキスト以外のモダリティへの適用、マルチモーダルモデルの可能性などについて言及している。

本書は、Transformerの基礎理論から実践的な適用方法、さらには最新の研究動向まで幅広くカバーしており、機械学習エンジニアにとって必読の一冊と言える。本書で得られる知識を活用することで、Transformerを用いた高度な自然言語処理システムを構築し、ビジネスの課題解決に役立てることができるだろう。