序盤3手の戦型と先手勝率について話題になっているので、floodgateの棋譜から統計を調べてみた。
相居飛車の序盤は3手で分岐して、4つの主要な戦型になります。(手順前後はありますが)
— Yu Yamaguchi / 山口 祐 (@ymg_aq) 2021年11月5日
その上で評価値からmin-maxを取ると赤矢印、つまり相掛かりが最善になるのかなと思います。これが最近のAI同士、人間のタイトル戦ともに相掛かりが多い理由だと理解しています pic.twitter.com/YgOyskl6SN
取得した統計
floodgateの2018年以降のR3500以上同士の棋譜から、序盤の出現頻度と先手勝率を調べた。
出現頻度上位21件をグラフにすると以下の通り。
横軸は、文字列を辞書順に並べている。棒グラフが頻度で、線グラフ(右のy軸)が先手勝率である。
上記のTweetで、7六歩(7g7f)→3四歩(3c3d)からは2六歩(2g2f)しか選択肢がないが、これを見ると2六歩(2g2f)以外は勝率が大きく下がることが分かる(将棋に詳しい方にはあたり前のことかもしれないが)。
頻度と勝率
頻度と勝率が必ずしも一致していないのが興味深い。
2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)からは、勝率は2五歩(2f2e)が高いが、頻度は7六歩(7g7f)の方が高い。
floodgateでは、勝率は低くなるにも関わらず、相掛かりより角換わりの方がよく指されているようである。
将棋ソフトの序盤には、角換わりになりやすいバイアスがかかっているのであろうか。
年ごとの傾向
年ごとに傾向に違いがあるか調べた。
(横軸がそろっていないのは、上位21件を抽出しているため)
2018年
2019年
2020年
2021年
2018年は、2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→7六歩(7g7f)が高かったが、
2019年に、2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→2五歩(2f2e)が増えて、
2020年に、2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→2五歩(2f2e)の方が多くなっている。
2021年には再び、2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→7六歩(7g7f)の方が多くなっている。
勝率は、2020年のみ2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→7六歩(7g7f)が少し高くなっているが、
それ以外は、2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→2五歩(2f2e)が高い。
2021年は、同じくらいになっている。
レーティングごとの傾向
上位のレーティング(R4200以上)のみに絞って調べた。
上位ソフト同士では、序盤3手は13パターンに絞られていた。
頻度は、2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→7六歩(7g7f)が多く、勝率は2六歩(2g2f)→8四歩(8c8d)→2五歩(2f2e)の方が高いという傾向は、変わっていなかった。
将棋ソフトの序盤は、角換わりを選択しやすくなる何らかの原因があるようである。
まとめ
floodgateの棋譜から、序盤3手の統計を調べてみた。
2020年は、相掛かりが流行っていたが、2021年には再び角換わりが流行っているようである。
また、興味深いことに頻度と勝率は一致していないことがわかった。
これは将棋ソフトの序盤にはまだ課題があることを示唆しているのかもしれない。