TadaoYamaokaの開発日記

個人開発しているスマホアプリや将棋AIの開発ネタを中心に書いていきます。

floodgateの戦型別先手勝率の変化

先日の第3回世界将棋AI電竜戦では、水匠の先手角換わり定跡の勝率の高さが注目された。
そこで、最近の将棋AI同士の対局で、戦型別の勝率に変化があるか調査した。

以下の調査では、戦型の分類にMizarさんが公開されているjsonの定義ファイルを使用している。

第3回世界将棋AI電竜戦

第3回世界将棋AI電竜戦のA級の全対局の出現回数が2以上の戦型別の勝率は以下の通りである。

戦型 回数 出現率 先手勝率 後手勝率 引分率
角換わり 25 30.5% 56.0% 36.0% 8.0%
相掛かり 14 17.1% 71.4% 28.6% 0.0%
角換わり,先手向かい飛車 4 4.9% 0.0% 100.0% 0.0%
先手横歩,角換わり 3 3.7% 100.0% 0.0% 0.0%
後手四間飛車,先手船囲い 3 3.7% 100.0% 0.0% 0.0%
後手三間飛車 3 3.7% 66.7% 33.3% 0.0%
角換わり,先手腰掛け銀 3 3.7% 66.7% 33.3% 0.0%
後手三間飛車,後手片美濃囲い 2 2.4% 50.0% 50.0% 0.0%
先手四間飛車,角換わり 2 2.4% 50.0% 50.0% 0.0%
先手四間飛車,後手船囲い,先手片美濃囲い,角換わり 2 2.4% 0.0% 100.0% 0.0%
後手中飛車 2 2.4% 50.0% 50.0% 0.0%

先手勝率は、相掛かりが71.4%と高い。これは、dlshogiが主に相掛かりを採用したためと思われる。
角換わりは56.0%で、相掛かりと比べると高くない。これは、水匠以外のソフトも角換わりを採用しているためと思われる。
また、角換わりは引分率が高く、千日手になりやすい戦型と言える。

floogateの棋譜

floogateの棋譜を年別に調査した。
R3800以上のソフト同士の対局でフィルターし、上位10個の戦型を記載する。

2019年
戦型 回数 出現率 先手勝率 後手勝率 引分率
角換わり 734 16.5% 52.5% 36.0% 11.6%
相掛かり 219 4.9% 47.9% 42.9% 9.1%
相掛かり,先手横歩 183 4.1% 75.4% 21.3% 3.3%
相掛かり,先手横歩,後手横歩 127 2.9% 79.5% 18.1% 2.4%
後手四間飛車,先手船囲い 106 2.4% 63.2% 32.1% 4.7%
後手四間飛車 84 1.9% 66.7% 29.8% 3.6%
相掛かり,先手横歩,後手横歩,角換わり 64 1.4% 87.5% 12.5% 0.0%
角換わり,後手向かい飛車 61 1.4% 49.2% 49.2% 1.6%
角換わり,後手早繰り銀 60 1.3% 43.3% 38.3% 18.3%
後手早繰り銀 58 1.3% 48.3% 39.7% 12.1%
2020年
戦型 回数 出現率 先手勝率 後手勝率 引分率
角換わり 1619 18.9% 49.3% 39.0% 11.7%
相掛かり 652 7.6% 45.4% 44.5% 10.1%
相掛かり,先手横歩 255 3.0% 67.1% 30.6% 2.4%
後手四間飛車,先手船囲い 253 3.0% 51.0% 45.5% 3.6%
相掛かり,先手横歩,後手横歩 238 2.8% 76.5% 21.0% 2.5%
後手四間飛車 212 2.5% 54.7% 41.0% 4.2%
先手四間飛車,後手船囲い 192 2.2% 59.9% 36.5% 3.6%
角換わり,後手早繰り銀 151 1.8% 57.6% 33.8% 8.6%
後手カニ囲い 143 1.7% 40.6% 53.1% 6.3%
先手四間飛車 142 1.7% 52.8% 42.3% 4.9%
2021年
戦型 回数 出現率 先手勝率 後手勝率 引分率
角換わり 3472 26.8% 53.4% 37.2% 9.4%
相掛かり 1577 12.2% 49.5% 44.3% 6.2%
角換わり,後手早繰り銀 725 5.6% 67.3% 25.9% 6.8%
角換わり,先手早繰り銀,後手早繰り銀 403 3.1% 48.9% 47.9% 3.2%
先手早繰り銀 266 2.0% 43.2% 50.4% 6.4%
角換わり,先手早繰り銀 264 2.0% 48.9% 43.6% 7.6%
先手横歩 255 2.0% 43.1% 49.4% 7.5%
先手腰掛け銀,後手二枚銀雁木 251 1.9% 33.1% 55.0% 12.0%
先手腰掛け銀 235 1.8% 43.4% 44.7% 11.9%
相掛かり,先手横歩 187 1.4% 70.6% 26.7% 2.7%
2022年
戦型 回数 出現率 先手勝率 後手勝率 引分率
角換わり 1550 29.2% 55.9% 33.9% 10.2%
相掛かり 800 15.1% 56.8% 33.8% 9.5%
角換わり,後手早繰り銀 194 3.7% 61.3% 34.5% 4.1%
後手四間飛車 152 2.9% 77.6% 20.4% 2.0%
先手腰掛け銀 143 2.7% 23.8% 63.6% 12.6%
先手四間飛車 140 2.6% 42.1% 57.9% 0.0%
先手四間飛車,後手船囲い 140 2.6% 50.0% 47.1% 2.9%
先手横歩 113 2.1% 39.8% 50.4% 9.7%
後手四間飛車,先手船囲い 98 1.8% 65.3% 31.6% 3.1%
角換わり,先手早繰り銀 97 1.8% 54.6% 37.1% 8.2%
年度別の出現率と先手勝率の変化

角換わりと相掛かりの年度別の出現率と先手勝率をグラフにした。
青線が出現率で、オレンジ線が先手勝率である。


考察

floogateでは、2019年から2022年を通して、角換わりの出現率が最も高い。
角換わり、相掛かりともに年ごとに出現率が高くなっている。

先手勝率は、2020年に一時的に低くなっている(引分率が高いため)が、それ以降は角換わり、相掛かりともに先手勝率が上昇している。
角換わりのみが特に先手勝率が高くなっている傾向はない。

まとめ

角換わりの先手勝率が、相掛かりに比べて高くなっている傾向があるかと思い、戦型別の勝率を調べたが、特にその傾向はみられなかった。
ただし、floodgateでは、角換わり、相掛かりともに、先手勝率は上昇している。