TadaoYamaokaの開発日記

個人開発しているスマホアプリや将棋AIの開発ネタを中心に書いていきます。

第4回世界将棋AI電竜戦 結果報告

週末の12/2、12/3に開催された第4回世界将棋AI電竜戦に参加しました。

HEROZチームとして、「dlshogi with HEROZ」というプログラム名でエントリしました。

結果

予選を1位で通過し、決勝リーグでは、最終戦で水匠に敗れて、準優勝という結果になりました。

1位、2位は僅差で、3位以下を大きく引き離しています。
予選では、水匠に先手、後手で連勝していましたので、優勝する可能性も十分あったと思います。
予選で用意した定跡の一部を見せたことで決勝で対策されてしまったのは作戦が甘かったかもしれません。

定跡自動生成

今大会では、定跡自動生成にすべての計算リソースを投入しました。
モデルは、第33回世界コンピュータ将棋選手権と同じものを使用しました。

第33回世界コンピュータ将棋選手権の結果報告で書きましたが、角換わり基本図からの先手角換わり定跡が将棋AI同士の対局では先手必勝と言えるほど勝率が高いため、後手の対策は必須となっています。

第33回世界コンピュータ将棋選手権では、角換わりを負けとして定跡を自動生成することで、角換わりを回避する定跡を作成しました。
その時点では、技術的な課題により開始局面から自動的に角換わりを回避することができなかったためです。

今大会では、技術的な課題を解決し、開始局面から手動による調整をすることなく、自動で角換わりを回避する定跡を作成できるようになりました。
初めは、後手は基本図を選択しますが、基本図を避けて角換わりの別の手順を選択するようになり、最終的には角換わり自体を回避するようになりました。

その定跡が、今大会で使用した6手目1四歩という定跡になります。
その前段階で、10手目4二銀という手も指していたので、大会では10手目4二銀の定跡も使用しました。

課題

定跡はかなり準備したつもりでしたが、先手で後手に互角持ち込まれる対局もあったのでまだ課題があることもわかりました。
すべて自動だと、探索と活用のトレードオフで、重要でないと判断された手順がなかなか調べられないため、人間の知識で深くまで調べられている手順を発見するのに時間がかかる場合があります。
大会で見つかった欠点については、自動作成に反映する仕組みを導入するつもりです。

まとめ

第4回世界将棋AI電竜戦に参加し、準優勝という結果を収めました。
今大会では、定跡自動生成にすべての計算リソースを投入し、開始局面から後手が角換わりを回避する手順を自動で発見しました。
人間の知識に頼ることなく、AIが独自に作成した定跡が実際に有効であることを示せたのは、意義のある成果だったと考えます。

最後に、大会を運営してくださった主催者様、対局してくださった他のチーム、そして応援してくださった皆様にお礼申し上げます。