TadaoYamaokaの開発日記

個人開発しているスマホアプリや将棋AIの開発ネタを中心に書いていきます。

【書評」ディープラーニング 学習する機械 ヤン・ルカン、人工知能を語る

このブログは無味乾燥な実験結果ばかり書いているが、たまには書評も書いてみる。

最近読み終わった本で、「ディープラーニング 学習する機械 ヤン・ルカン、人工知能を語る」がとても面白かったので紹介する。

実は人文書

タイトルだけみると理系の工学系の専門書のようだが、はじめ自分もそのようなつもり読み始めたが、読んでみたらむしろ人文書に分類されるような内容だった。
人の知能とは何かを、最先端の人工知能の研究者の視点から書かれている。
機械学習の数学的な説明も少しあるがその部分は読み飛ばしても問題がなく、筆者の人工知能の研究に携わってきた際のエピソードが面白く、また知能とはなにかという哲学的なテーマを筆者の視点から語っている。
どちらの内容も読みごたえがあった。

私と人文系

私は、大学時代は工学部だったが人文系の講義もいくつか選択して、たまたま受けた橋爪大三郎先生の講義で人文系の科目にも興味を持って、一時期「方法序説」「純粋理性批判」「道徳の系譜」「論理哲学論考」「存在と時間」といった西洋哲学の本を読んでいた。
これらは唯心論的な立場で、人間の知能は特別な存在として、観測される現象は、あくまで"人によって"認識される現象であるという立場で語られており、人の認識について理解を深めることができたが、それでも工学系の自分にとっては違和感を覚えるものであった。

著者の主張

この本で筆者は、知能を唯物論的な立場でとらえて、脳は「計算」する機械であり、その計算は原理的にはコンピュータで再現でき、意識とは「大規模な神経回路網の創発特性にすぎない」と確信している。
最近の研究でわかってきたことや、ニューラルネットワークが一部を再現していることから、知能は神秘ではなく原理が明らかできるものと、読者に語りかける。
人工知能の研究とは唯心論へのいわばアンチテーゼなのである。
ただし、これは筆者の信じるところであり、現在わかっているのがどの程度で、まだ脳の大部分はわかっておらず、それらを解明する道筋すら立っていないことも謙虚に語っている。


ということで、タイトルとは違って非エンジニアの方でも読みごたえのある内容になっており、哲学書として読んでみても面白いのではないかと思って紹介してみた。

正月早々長文にお付き合いありがとうございました(๑•ᴗ•๑)